BIS論壇 『中国を訪問して』2017年8月29日 中川十郎

BIS論壇 『中国を訪問して』2017年8月29日 中川十郎
 8月20日から23日の河西省・九江市の国立職業大学訪問の途次、5年ぶりに上海を訪問した。成田空港とは比較にならない広大な空港の大きさに圧倒された。2013年に開催された上海万博を機に整備された空港は鳥の形を模し、北京空港に次ぐ壮大なもので、躍進する中国の勢いをまざまざと感じさせられた。上海市中心部へはドイツが建設したリニアモーターカー、地下鉄、バスとアクセスが良い。南昌空港への乗り替えまで時間があったので、地下鉄で上海中心部に向かった。車内で、若い女性から席を譲られた。日本の地下鉄や電車ではありえない光景だ。共産主義政権でも儒教は生きており、高齢者に対する尊敬の念は健在だ。日本の車内で優先席に陣取りスマホに没頭し、席の前に高齢者や子供ずれが立たっていても意に介さぬ日本の若者とは雲泥の差だ。このような若者の道徳観念では日本の将来を憂えざるを得ない。到着日の翌日、20年前から職業教育に尽力している九江・国立職業大学を訪問した。日本の大学とは比較にならぬ38万平方メートルの広大な敷地に職業実習・訓練施設や図書館、運動場、寄宿舎を有する廣さには驚愕した。在学生は16000人。師範教育学院、技術学院、機械工学院、建築学院、情報工学院、経済経営学院、文化観光学院、看護学院、農業経済技術学院があり、全中国の28省からの学生が学んでいる。本年は初めて看護学院から日本に研修生が派遣されることになったと副学長から説明があった。日本ではやっと2018年度から短大や職業大学院での職業専門教育開始を検討しているが、中國では職業訓連大学は30年の歴史があるとのこと。日本は実践的な専門教育において大幅に出遅れていることを痛感させられた。
 翌日は宋時代からの1000年の歴史を有する陶器製造で世界的に有名な景徳鎮を訪問した。九江から景徳鎮までの100キロにわたる高速道路の両脇と中間帯は植林され緑のベルトが続き圧倒された。景徳鎮の1000年を超す、陶土の発掘現場は禿山を植林しており、同行の副学長が中国の環境保全、グリーン革命を自慢していた。中国政府の国をあげての環境革命の実態を目の当たりにした。景徳鎮の陶芸文化保存にも熱心で、景徳鎮三宝陶芸研究院、景徳鎮国際陶芸村博物館で世界の陶芸研究家も参加し、国際的な陶芸文化保存に尽力している努力に感銘を受けた。日本とは有田、瀬戸、最近、金澤と姉妹都市を締結。文化交流をしている由。沿道での建築建設が大半ストップしている様は中国の不動産不況の実情を具現していた。津上俊哉氏の近著『「米中経済戦争」の内実を読み解く』(PHP新著)や何 清漣、程 暁農 共著『中国~とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ』~在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる~(ワニブックス)などでの中国は「崩壊」は免れようが、「衰退」するとの説に配慮の余地はある。だが、今回、上海、南昌、北京の現地を訪問し、中國は高度成長の光と影とひずみ、人権など問題はあろうが、21世紀のユーラシアの陸と海の巨大経済圏物流戦略「一帯一路」を含み、驀進する中国は、大方の予想通り、2025年ごろには米国に並ぶか肉薄する大国に成長するのではないかと実感させられた。
日本の中国進出企業は2万社。最大の輸入先が中国。
輸出先では米国に次ぐ2位だ。日本は中国敵視政策を改めて、中國との友好促進に尽力すべきだと痛感した。

BIS論壇 『「陝西省~日本ビジネス交流会」に参加して』2017年8月27日 中川十郎

BIS論壇 『「陝西省~日本ビジネス交流会」に参加して』2017年8月27日 中川十郎

2017年8月24日、北京のホテルニューオータニで第2回日中(陝西)プロジェクト協力セミナーが開催された。BISにもたびたび参加されている日中現代経済研究所所長の劉 峰・経済学博士ともども参加した。陝西省側関係者50名、日本側50名が参加し盛会であった。

筆者は、陝西省、JETROが先に東京で開催の同様会議に参加。たまたま8月20~23日、河西省、南昌・九江市の国家職業大学、陶器の名所・景徳鎮などを訪問中だったので、23日の午後、北京に飛び、この会議に参加した。
主催は、陝西省商務庁、JETRO北京事務所、参加者は、陝西省政府幹部、中國商務部外国投資管理司幹部、陝西省商務庁・陝西省外事弁公室・陝西自由貿易試験開発区担当者、陝西省企業代表、駐中国・日本大使館公使、JETRO理事・北京事務所長、日本企業代表者であった。司会は陝西省商務庁長、趙 潤民が行った。会議の目玉は、陝西省が「一帯一路」の起点となるところより、「一帯一路」計画への関与、建設プロジェクトの説明が大半を占め、日本企業の参画を強く求められた。
会議は西安先端技術産業開発区のハイテク産業、西安経済技術開発区のハイエンド製造業、楊凌師範区の近代農業プロジェクト、西安国際港務区の近代物流産業、西安生態区の金融サービス業、西咸新区空港新城の航空物流産業、西咸新区秦漢新城の健康産業など「一帯一路」関連プロジェクトの紹介が行われた。
その構想は、まさしく習政権が総力を結集する21世紀のシルクロードの西安を起点とするアジアからユーロッパへの壮大な計画で、「一帯一路」はすでに具体的に動き出していることを実感した。会議では、西安からの参加者が、唐時代の日本の遣唐使以来、中国と日本は1000年近い善隣友好、文化交流の長く深い関係があること、この機会に日本と西安とさらなる21世紀の経済、文化交流を促進すべきこと、遣唐使の秀才として誉れ高かったが現地で没した「井 真成」、唐の安南使として活躍した阿倍仲麻呂、現代では京セラの稲盛和夫氏らの経営分野での業績を高く評価。西安と日本が「一帯一路」を通じてさらに協力を強化したいとの要望が西安側講演者各位より強調された。会議で、日本は今こそ「一帯一路」で中国に協力すべきと発言したところ、会議後、内外の記者やビジネスマン10数名が名刺交換に私のところに殺到した。中國側関係者が日本の参加にいかに関心を持っているかの証左だと思った。南昌から北京へのAIR CHINA(中国航空)の機上で目にした“China Daily”紙には「一帯一路」関係の記事が3つも出ており、中国の関心の高さに驚いた。一つは、中国は2020年までに時速350キロの新幹線車両500両を製造するというもの。2つ目は、パキスタンの外務大臣が習主席と面談。パキスタンは「一帯一路」による中国-パキスタン経済回廊計画に全面的に協力すると発言。3つ目の記事は、成都が「一帯一路」の中西部の航空、鉄道のハブとなりつつあり、米国やポーランド、ドイツ、オランダへの直行便が動き出しているとの記事だ。日本も積極的に動かねば「一帯一路」に出遅れ悔いを千載に残すだろう。

日本ビジネス・インテリジェンス協会主催 26周年記念・第154回ビジネス・インテリジェンス情報研究会のご案内

日本ビジネス・インテリジェンス協会
Business Intelligence Society of Japan
26周年記念・第154回ビジネス・インテリジェンス情報研究会のご案内
会長・名古屋市立大学特任教授
中川 十郎

気候不順と猛暑が続いておりますが、皆様、猛暑にもめげず、ご活躍のことと存じます。
さて9月の26周年第154回情報研究会は文化問題を中心に下記要領で開催いたします。
文化、情報に興味をお持ちの知人、友人もお誘いの上、皆様どうぞ多数ご参加下さい。

【日時】2017年9月25日(月) 6:00~9:00pm
【場所】新宿安与ホール7階(※JR新宿駅中央東口高島屋寄り出口から徒歩1分)
(新宿区新宿3-37-11、Tel.03-3352-5120)
【参加費】3,000円、学生1,000円。参加希望者は9月15日(金)まで申し込み下さい。
※当日のキャンセルは恐縮ながら実費を申し受けますので、代理出席などを御配慮ください。

【プログラム】
〔会長挨拶、及び新参加者紹介 (6:00~6:10pm)〕
1.『バチカンを通じて見た西欧文明』(6:10~6:40pm)
上野 景文・杏林大学特任教授、文明論考家、元駐バチカン大使
2.『健康・医療都市・天津市の未来戦略』(6:40~7:10pm)
蔵 学思・天津市商務委員会外資処理処長-特別参加(通訳:董 躍武氏)
3.『馬の絵と心の安らぎ』(7:10~7:30pm)
池依 依依・美術家~台湾
〔休憩 (7:30~7:40pm)〕
4.『縄文の言葉の力』~言霊を神魂す言の葉~(7:40~8:00pm)
松木 貴子アリア・ソプラノ歌手
5.『日本文化と国際交流』(8:00~8:20pm)
武田 洋平・星城大学元教授、文明評論家
6.『革新的技術VI Code』~情報の入り口を視覚でデザインする(8:20~8:35pm)
溝部 達司・VICode社長、ブランド戦略、開発コンサルタント
7.『緊迫する北朝鮮問題の現状』-特別緊急報告(8:35~8:45pm)
高 永喆・拓殖大学客員研究員、韓国統一振興学院専任教授、元韓国国防省分析官
〔コメント・全体質疑応答(8:45~9:00pm)〕
〔閉会の辞 香取一昭副会長(9:00pm~)〕
【懇親会】(9:15~10:30pm)
サムラート/バンコク テラス 新宿東口駅前店
(新宿区新宿3-18-4セノビル7F)(03-3355-1788)(飲み放題2,960円)

【申し込み・問い合わせ先】

日本ビジネスインテリジェンス協会

Fax03-5497-3259

Tel.03-5497-3260

e-mail : jm-naka@mvb.biglobe.ne.jp

 

Information of “The 154th Business Intelligence Study Meeting”

sponsored by Business Intelligence Society of Japan(President : Prof. Juro Nakagawa)

 

【Date&Time】September 25th(Mon) 6:00pm~9:00pm

【Venue】Yasuyo Hall(1 minute walk from Shinjuku Station East Exit)

3-37-11-7F, Sinjuku Sinjuku-Ku, Tokyo, Japan (Tel.03-3352-5120)

【Attendance Fee】3,000Yen

 

【Program】

〈Opening Remarks〉 [6:00pm~6:10pm]

(1) “Western Civilization through Vatican”  [6:10pm~6:40pm]

by Kagefumi Ueno, former Ambassador to the Holy See(the Vatican) & Kyorin University Professor(non-tenured)

(2) “Future Strategy of Tianjin City as a Health & Medical Inovation Town” [6:40pm~7:10pm]

by Zàng Xué sī, Manager of Tianjin Commission of Commerce

(3) “Pictures of Horses and Peace of Mind” [7:10pm~7:30pm]

by II Ikei, Tawanese Painter

〈Intermission〉[7:30pm~7:40pm]

(4) “Miraculous Power of the Jomon Period’s Language” [7:40pm~8:00pm]

by Takako Maria Matsuki, Soprano Singer

(5) “Japanese Culture and International Exchange” [8:00pm~8:20pm]

by Yohei Takeda, former Professor of Seijoh University

(6) “VICode as an Innovative Technology” [8:20pm~8:35pm]

by Tatsuji Minobe, President of VICode Co.,Ltd

(7) “North Korea’s Tense Situation” [8:35pm~8:45pm]

by Koh Young Choul, Research Professor of Takusyoku University & Former Analyst of Ministry of National Defense, The Republic of Korea

〈Comment, Questions & Answers Period〉[8:45pm~9:00pm]

〈Closing Remarks〉 [9:00pm~]

※ This program will be conducted in Japanese only.

 

【Reception】

Asian Kitchen SAMRAT/Bangkok Terrace

3-18-4-Seno Building7F, Sinjuku Sinjuku-Ku, Tokyo, Japan (Tel.03-3355-1788)

2,980Yen all-you-can-drink

BIS論壇 『2017年度通商白書』2017年8月12日 中川十郎

BIS論壇 『2017年度通商白書』2017年8月12日 中川十郎

このほど69回目の2017年度通商自書が発表され、8月 2日、その説明会があり参加した。本年の通商白書のメインメッセージは下記である。
トランプ政権のアメリカファースト政策や、TPPか らの離脱、NAFTAや 、米国―韓国FTAの再交渉、中国、日本をはじめ貿易赤字国との二国間交渉を目指す保護主義的な米国の対応に対し、日本としては下記、自由貿易の必要性を訴えているのが特徴である。
1.自由貿易は経済成長のエンジンであり、格差縮小にも寄与している。 
1)自由貿易はパイ拡大に不可欠。貿易は一人当たり経済成長率を高める寄与度が高い。ミクロで見ても輸出に従事する企業は生産性を伸ばしていると分析。
2)米国を中心として先進国では格差拡大でグローバル化への不満が台頭している。しかし、格差は技術革新に起国する。貿易は格差縮小に貢献していると強調している。
2.21世紀型の通商政策が必要とし、
1)グローバルバリューチェインの飛躍的発展で貿易は「モノ」から「価値(モノ、 ヒト、カネ、情報)へと変化している。(この意味でBISの情報研究は重要であると思われる=筆者注)
2)“自由貿易”への疑念の深まりを克服すべきだ。
3)「新新貿易理論」(個別企業の生産性とグローバル化が示唆するグローバル活動への参入支援策)が重要。
3.「21世紀型通商政策」は、1)イノベーションを支え、2)インクルーシブ(包括的)な成長を志向すべきだ。
(1)グローバル経済の発展には自由で公正な高いレベルの通商ルールが不可欠。
(2)モノ、カネ、ヒト、情報の自由な往来と「つながり」によるイノベーションを進め、「コネクテッド・インダストリー」やSociety5.0を実現する。すなはち「内なる国際化」(対内直接投資、高度人材受け入れ)、オープンイノ ベーションを推進。そのための通商 “投資ルール策定を進める。
(3)中小企業や地域などをグローバル経済にいざない「インクルーシブ」な成長 を実現する。すなはち市場調査、取引先開拓、流通網整備などのコスト引き下げや、生産性向上による体力強化で中小企業のグローバル活動参入を促す。また、商社などを経由の間接輸出、eコマースの促進、新輸出大国コンソーシアムなどを活用した海外展開支援を行う。観光や農産品・食品など地域産品の輸出促進IT・ロボット導入などを通じた地域経済の生産性向上などを図るなどと抽象的な提言がなされているが、これは米国が脱退したTPP再構築の理由付けの感を免れない。むしろ、日本としてはこの機会にASEAN+3や,日中韓のFTA、さらに、RCEPの積極的推進や、さらに、アジアに軸足を置いた「一帯―路」や「AHBJ への参画を前向きに検討する21世紀型の新貿易政策の提言がないのは残念だ。

BIS論壇 『広域経済圏構想「一帯一路」の現状』2017年8月11日 中川十郎

BIS論壇 『広域経済圏構想「一帯一路」の現状』2017年8月11日 中川十郎

去る7月28日JETRO主催でアフリカ開発銀行関係者が参加のアフリカセミナーがあった。アマゾウ・ハット・アフリカ開銀副総裁やカブール中小企業戦略局長などが参加。アフリカは現在年間350億ドル(3兆9000億円)の食糧輸入をしているが、2020年には食料の輸出国になる。アフリカの域内ビジネスも2020年には現在の15%が50%に拡大する。
エネルギー分野でも日照時間が長く全アフリカで太陽光発電が可能である。2020年までにはアフリカはICT関係のインキュベータセンターになる。エネルギー、健康医療、道路、小プロジェクトなどビジネスチャンスがある。現在のアフリカ全体の人口は10億人だが、2050年になると20億人に増加。ビジネスチャンスがあるのでグローバル企業はアフリカを狙うべきだ。アフリカのビジネスパーソンはニューヨークと同じく、メールでアポが取れる。特にケニヤ、ナイジェリア、モザンビークなどビジネスチャンスがある。BOP(Base of Pyramid)ビジネスの地方でのチャンスの可能性も高い。
アフリカ開銀はJICA, JETROと協力し、リスク保全、パートナーの紹介なども行う。日本企業も将来発展が期待されているアフリカへの進出を急ぐべきだとのことであった。
中国が主導の「一帯一路」「AIIB」など、アフリカ開発との関連についてどう見ているかとの筆者の質問に対し、『「一帯一路」はアジア、中央アジアからヨーロッパへの物流網建設が中心故、アフリカにはそれほどの恩恵はないのではないか』との見方であった。ただし情報収集に東京からの帰途、北京に立ち寄りAIIBを訪問するとのことであった。
しかし8月2日付け日経によれば、中國はアフリカで鉄道整備を加速している。ケニアでは首都ナイロビとカンパラ港を結ぶ鉄道が5月に開通。さらにルアンダ、ウガンダ、ブルンジ、エチオピアに延伸する計画もある。エチオピアでは隣国シブチの港湾を結ぶ鉄道が完成まじかで物流や経済の活性化に期待がかかっている。エチオピアではアデイスアベバとシブチを結ぶ鉄道も間もなく開通する。西アフリカではナイジェリアの首都アブジャとカドウナを結ぶ路線も昨年開通した。アフリカの輸送インフラに中国は2000~2015年に300億ドル程度の融資を実施。鉄道の総工費はケニアで30億ドル。エチオピアで40億ドルで大半が中国の融資である。中国はアフリカの鉄道や港湾など交易路を整備し、独自の経済圏をつくり、中国製品の輸出や製造業の移転先としてアフリカに期待している。中國はこのようにアフリカ各地の鉄道計画などを資金面で後押しし、「一帯一路」構想にアフリカも組み込まれていると報じている。
8月8日にASEANセンター主催で開催されたASEAN50周年記念シンポに出席のERIA(ASEAN、東アジ経済研究所)のNarjoko上級研究員に「一帯一路」に対するASEANの見解を聴取した。同氏はASEANは2025年を目指し、域内の統合とConnectivityにさらに努力中で、まずASEAN統合に注力する。「一帯一路」は中国から中央アジア、ヨーロッパを結節する構想で、ASEANは距離をおいており、まずASEAN共同体の構築に注力したいと「一帯一路」には冷静な見方をしているのが印象的であった。ただしAIIBについてはプロジェクトファイナンスについてケースバイケースで活用するとのことであった。